暁。 [小説]
朝早くに目が覚めた。
もう一度寝直そうと寝返りを打った。
窓のカーテンの隙間から空が見えた。
今まさに夜が明けようとしている空だった。
藍と茜が混じる空。
「…明けない夜はないってば。」
つぶやきが聞こえたのか、隣人が身じろいだ。
空から寝息を立てる隣人に視線を向ける。
黒髪が顔にかかって鬱陶しそうに見えた。
そうっとそれを払う。
整った顔立ちの、年齢よりは年上に見える顔が現れた。
「眉間にしわが…。」
眠りながらも難しいことを考えているのか、
しっかりしわが縦に入っている。
起こさないように優しくつついてみた。
それくらいでは伸びないことは分かっているのだが、
やらずにはいられない。
「男前が台無しだってば。」
気難しい顔も渋くて好きなのだが、
優しく笑った顔が一番好きなのだ。
何より独り占めしているような気がして仕方がなくて。
そう、この隣人は滅多と人の前で笑わないのだ。
「へへへ…。」
自然と笑みが漏れる。
自分にだけ向けられた笑顔。
誰にも渡せない。
「大好きだってば。」
眠る隣人の額に口付ける。
空は茜でいっぱいになっていた。
そして腕の中でもう一度目を閉じた。
僅かな時間ももったいなくて…。
・・・・・・・色々ご想像にお任せします。はい。(苦笑)
2006-09-20 22:58
nice!(0)
コメント(0)
トラックバック(0)
コメント 0